内丹仙学

内丹とは、人体の秘密を探索する実験手順のことをいいます。それは、心(性=神のある場所)と内臓=腎(命=気のある場所)を、道=タオ(無極/絶対虚無、永久不変)から生まれた丹田にある道気(先天の気)と、思慮から発した気=後天の気を使って煉丹=道を修め、道を広く及ぼして道に復帰することなのです。

人間が生成するときの規則も、天地が生成するときの規則と同じであると考えています。

初めに父と母が交わり、恍惚の中で先天の気が合成され、人体の生命が生み出されます。
母の腹の中で育っていく胎児の姿は、人の姿に似てくるがまだ完全には整っていません。
神と気もまだはっきりせず、人道の「第1変」と呼ばれます。
胎児がさらに育っていくと、心と腎が生み出され、神と気が分かれ、性と命がはっきりしてきます。
10カ月を過ぎると、胎児は胎を脱して出てくるのです。
この時、先天の気は臍の中にあり、後天の気は口と鼻にあり呼吸となります。
先天の神は心の中にありますが、それから後天の思慮の神が起こります。これが人道の「第2変」と呼ばれます。
人間はさらに成長していくと、陽が生じ陰が消え、16歳頃になると精・気・神は全盛期に達します。この時が12消息卦の乾卦に相当し、人道の「第3変」です。
内丹家は人体の精・気・神を先天の元精・元気・元神と後天の淫[自由きままなこと]の精・呼吸の気・思慮の神(識神)に区別しています。
人は出生すると、次第に先天の元神が退いて後天の識神が用いられ、生命を維持するために呼吸の気に頼るようになるのです。
16歳以後年齢を重ねていくと、情欲が芽生え、邪念は止まず、男女交感して有形の精を排泄し、陰が増えて陽は消えていきます。
そして64歳頃になると、元陽は消耗して尽きます。
この時、12消息卦では坤卦に相当し、人はやがて衰えて老い、死んでいくのです。

内丹学家は、宇宙の万物にはすべて生成から死滅への過程があり、虚無だけが唯一永久不変不滅のものであることを知っています。
虚の中に物はなく、質も象もないから、たとえ天地が崩壊しても虚だけは崩壊することがないのです。虚無は道です。
道から先天の一気が生じ、一気から陰と陽が生じ、陰と陽から天・地・人の3才が生じ、それから宇宙の万物が派生するというのが宇宙の「順」方向の変化です。
内丹学家は、道に取り組んで真と1つになることを追求し、宇宙の変化は可逆であると考え、それを逆に進めようとしました。
内丹仙学の基本原理は、人間は修練によって後天から先天の永久不変の虚無の状態へと「逆」方向に進むことができるということです。
それによって道と交わり一体化できるのです。

内丹家は、宇宙の変化を「逆」方向に進めます。

つまり、順に進むと人を生み物を生みますが、逆に進むと仙に成り神に成るというわけです。

彼らは内丹を修練することによって人体の潜在能力を開発し、エントロピー反応を食い止め、人間の精・気・神を1つに凝結させて高度に秩序だて、胎児と同じ先天の状態に変えるのです。

内丹学ではこの人体実験の過程を「三関修煉」と言います。

「百日関」(初関)は人の精と気を融合させて(炁は精と気が合したものの名称です。)、精と神に変えてしまいます。

これが「三帰二[三から二に帰る]」の過程です。

「十月関」(中関)は「二帰一[二から一に帰る]」の過程であり、炁を煉って神に変ます。

「九年関」(上関)は神を虚に戻し、内丹の最高の境地に到達するのです。

内丹の修練の過程では、人体も逆の方向をたどって人道の「第3変」から「第2変」に返り、さらに「第2変」から「第1変」に返り、最後に「第1変」から虚無に返り、内丹は完成するのです。

《唱道真言》には「道の要は、虚に過ぎないが、虚は万象を含む。世界は壊れることがあるが、虚だけは壊れることがない。道経に言っているように、形神倶妙[肉体も意識も絶妙]であれば、道と交わって真と一つになる。道は虚以外のなにものでもない。形神倶妙であるということは、形神倶虚[肉体も意識も虚]である」と書かれている。逆の方向に進めば本に返り元に還るという発想から、「順は人を生み、逆は仙に成る」という原理が生まれた。この原理をよりどころにして、宇宙が逆方向に変化する過程を人体内で模倣するのが丹道の要旨である。性と命が虚霊である元神に帰りそして宇宙精神に溶け込み、「道」の境地まで昇ってゆく。これが内丹仙学の基本思想である。

と記されています。